最近読んだ本2冊。
『恋するように旅をして』は、実はまだ途中です。あとちょっと。
旅のエッセイを読んでるときは、たいてい、憧れとともに、とでも言うのか、こんな旅してみたいなぁとか、行ってみたいなぁっていう気持ちになるんだけど・・・うーーん、そういうのとはちょっと違った。
角田さんはアジアが好きらしい。
このエッセイに出てくる国もほとんどがアジアだ。
私が、おそらく、絶対、行くことのないであろう国々。
ひとりで、まったく知らない国に、宿泊先も決めず、地図も読めず、交通手段もきちんと把握せず、現地語はまるで話せなくて片言の英語オンリーで。
・・ウソでしょう;;;と思う。
飛行機の中で騒ぎ立てる危険なおっさんや、ネズミが走り回る夜行列車の窓から、数々の虫の大群が風を切って押し寄せてくるさまは、本当にぞっとするし、暴力バスで死にそうになんてなりたくない。
しかし。
なぜだろう。
それらのアジアの国々が、とても美しく思えたりするのだ。
夜行列車で、虫の大群が去ったあと、頭上に広がる星空を見てこんな風に書いている。
“世界を覆う果ての無い布地の上で、巨大な硝子をたった今粉々に割ったみたいだった。濃紺の空で星は、大きいのも小さいのも濡れているように、呼吸するように光っていた。列車は轟音をまき散らしながら星の合間を進んでいくようだった”
角田さんが見たり感じたりする美しいものや、人と人との出会いや、怒りや、憤慨、戸惑い、そして孤独・・・それは日本や、他の整然とした国では、もう見られないし、出会えないものなのかもしれない。
そしてそれは、一度体験したら、やめられなくなってしまうのかもしれないなぁ、と思った。
そんな風に考えると、自分の世界の狭さや気持ちの弱さにちょっとがっかりもするが、でも、やっぱり、私は私でいいのだと思うのです。
そのためにこんな本があるのだ、と思うから。
『さがしもの』は角田さんの作品で私が一番好きな本かも。
冒頭の『旅する本』とか、古本屋の『ミツザワ書店』とか、あぁ、何度も読みたくなる。
『恋するように旅をして』 講談社文庫
『さがしもの』 新潮文庫
角田光代